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動悸
動悸とは

動悸とは、通常は自覚されない心臓の拍動(心拍)を自覚した状態のことであり、心拍に一致した不快感や違和感として自覚されることもあります。心臓が血液を送り出す際に動脈に生じる拍動(脈拍)が速くても(頻脈)、遅くても(徐脈)、普通であっても(整脈)、その脈拍がいつもと違うだけで「動悸」とひとくくりで表現されてしまうため、どのような動悸なのかが重要となります。
動悸の原因・症状・種類
普通、自分の心臓の拍動は感じられませんが、何らかの理由で心臓が普段より強くまたは速く拍動すると、多くの人が心臓の拍動を自覚するようになります。このような急激で強い拍動は、心臓による正常な反応です(洞頻拍)。原因としては以下のものがあります。
- 運動
- 強い感情(不安、恐怖、痛みなど)
- 貧血(赤血球の減少)
- 低血圧
- 発熱
- 脱水
その他に、心臓のリズムに乱れ(不整脈)が生じる結果として動悸が起きる場合もあります。
不整脈の種類
不整脈には無害なものから生命を脅かすものまであります。最も一般的な不整脈としては、以下のものがあります。
- 心房期外収縮
- 心室期外収縮
これらの不整脈は、どちらも通常は心疾患のない人でみられ、無害です。期外収縮自体は自覚できません。感じることができるのは、その後に続く正常な拍動で、通常よりわずかに遅いタイミングで、わずかに強い拍動が生じます。まるで心臓が拍動を1回飛ばしたかのように感じますが、実際にそうなったわけではありません。
動悸を引き起こすその他の不整脈としては、以下のものがあります。
- 発作性上室頻拍(PSVT)
- 房室結節リエントリー性頻拍
- 心房細動または心房粗動
- 心室頻拍
これらの不整脈では、心臓が正常時よりはるかに速く拍動します。心臓の拍動が遅くなる不整脈では、動悸が生じることはまれですが、なかには遅くなった心拍を感じる人もいます。
不整脈の原因
一部の不整脈(例えば、心房期外収縮、心室期外収縮、PSVT)は、重篤な基礎疾患のない人でもしばしば発生します。それ以外の不整脈は、重篤な心疾患や体の他の部分の病気によって発生する場合が多いです。
重篤な心疾患としては、狭心症、心臓発作(急性冠症候群)、先天性心疾患(例えば、ブルガダ症候群、先天性QT延長症候群)、心臓弁の病気、刺激伝導系の病気(例えば、WPW「ウォルフ・パーキンソン・ホワイト」症候群)などがあります。
心臓とは無関係な病気で不整脈を引き起こす可能性がある病気としては、以下のものがあります。
- 甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)
- 低酸素症(血液中の酸素レベルが低くなった状態)
- 低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が低くなった状態)
- 低マグネシウム血症(血液中のマグネシウム濃度が低くなった状態)
- アルコール、カフェイン、ジゴキシン、ニコチン、一部の興奮剤(サルブタモール、アンフェタミン、コカイン、アドレナリン、エフェドリン、テオフィリンなど)といった特定の薬剤
- 副腎の腫瘍(褐色細胞腫)
合併症
心臓の拍動が速すぎると、血液を十分に送り出すことができなくなり、気が遠くなったり失神したり、心不全を起こしたりする可能性があります。心不全は主に、過去に心不全または心臓発作を起こしたことのある人でみられますが、それ以外の人でも、心臓の拍動が非常に速くなっているか、速すぎる状態が長期間続いている場合には、心不全が起きる可能性があります。心拍数が速くなることで、心筋が必要とする酸素量も増加します。心筋への動脈が細くなっている人(冠動脈疾患)は、狭心症または心臓発作(死に至る場合があります)により胸の痛みが生じる可能性があります。
一部の不整脈(特に心室頻拍)は不安定で、心停止の直接の原因になる可能性もあります。
動悸の診断
動悸の原因は大半が深刻なものではありませんが、一般的には検査が行われます。
- 心電図検査、ときに自由行動下モニタリング
- 臨床検査
- ときに画像検査、負荷試験、またはその両方
- ときに心臓電気生理検査
心電図検査
動悸や異常な心拍が起きている時点で心電図検査を行えば、通常は明確な診断が下されます。しかし、動悸が起きていないときに心電図検査を行う場合には、考えられる原因のうち検査中に異常が認められるのはわずかだけです。このため、動悸が断続的に起きている場合には、短期間または不規則に発生する不整脈を検出するため、心電図の計測機器を1日または2日間もしくはより長期間にわたって装着する必要があります。心拍をモニタリングするために、医師が皮膚の下に装置を埋め込む場合もあります。この装置はループレコーダーと呼ばれるもので、心拍を継続的にモニタリングすることができます。その後は外部モニターを使って、不整脈が起きていないかループレコーダーをチェックすることができます。心拍数をモニタリングするフィットネストラッカーや、心拍リズムをモニタリングするその他の装置が市販されており、スマートフォンやスマートウォッチに対応したものもあります。
臨床検査
血算を行うほか、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの血清中の電解質濃度を測定します。急性冠症候群の可能性を疑わせる他の症状がみられる場合は、血清中の心筋マーカーという物質を測定することもあります。甲状腺機能亢進症(甲状腺の活動が過剰になった状態)が疑われる場合は、血液中の甲状腺ホルモンの濃度を測定し、また褐色細胞腫があると考えられる場合は、他のホルモンの濃度を測定します。医師が疑うほかの原因に応じて、その他の検査が行われることもあります。
画像検査(必要に応じて)
心電図検査で心疾患が疑われた場合は、心エコー検査のほか、ときに心臓のMRI検査を行います。活動中に症状が現れる場合は、負荷試験が必要で、ときに負荷心エコー検査やシンチグラフィー検査を行います。
心電図検査(必要に応じて)
症状が重い人で、ほかの検査では見つけられない危険な不整脈が疑われる場合に行われます。この検査では、小さな電極を静脈の中を通して心臓内まで挿入します。それらの電極を用いて、心電図検査よりも詳細に心臓の電気的活動を記録します。
動悸を悪化させることが判明している薬や物質(カフェインなど)の使用を中止します。治療に必要な薬が危険な不整脈や体力を奪う不整脈の原因になっている場合は、使用する薬を変更します。
心疾患が原因ではない心房期外収縮または心室期外収縮では、通常は医師から心配ないと伝えられるだけです。これらの無害な動悸がとても煩わしく感じられる場合は、ときにベータ遮断薬(抗不整脈薬の一種)が処方されることがあります。その他の不整脈が特定された場合は、その基礎疾患も併せて検査と治療を行います。多くの場合、拍動のリズムをコントロールする薬(ジゴキシン、フレイカニド、ベラパミル、ジルチアゼム、アミオダロンなど)がまず処方されます。しかし、これらの薬剤の多くは、それ自体も不整脈を引き起こす可能性があるだけでなく、そのほかにも副作用があります。
特定の不整脈(例えば、心房粗動、PSVT、房室結節リエントリー性頻拍)では、多くの場合、体により大きな負担をかける治療法である高周波アブレーションが最良の治療選択肢となります。さらに、薬が効かない場合と特定の危険な不整脈がみられる場合は、電気的除細動やペースメーカーと除細動器の植込みなど、さらに大きな負担をかける治療法が用いられることがあります。どの方法を選択するかは、異常の原因になっている具体的な病気によって決まります。
監修者情報

清原 義幹(きよはら よしもと)
きよはら内科 糖尿病・甲状腺クリニック 院長
経歴
- 1997年神戸大学医学部附属病院 内科系 研修医
- 1998年京都大学大学院医学研究科 博士課程入学
- 2003年京都大学大学院医学研究科 博士課程修了
- 2003年独立行政法人理化学研究所 研究員
- 2007年INSERM フランス国立医学研究機構 研究員
- 2008年医療法人浩仁会 南堺病院 内科 医員
- 2010年医療法人浩仁会 南堺病院 内科 医長
- 2012年独立行政法人労働者健康福祉機構 大阪労災病院 糖尿病内科 医長
- 2016年独立行政法人労働者健康安全機構 大阪労災病院 糖尿病内科 医長
- 2018年独立行政法人労働者健康安全機構 大阪労災病院 糖尿病内科 副部長
- 2019年医療法人浩仁会 南堺病院 糖尿病内科 部長
- 2024年きよはら内科クリニック(現:きよはら内科 糖尿病・甲状腺クリニック) 院長
ご挨拶
大阪市西区・肥後橋のきよはら内科 糖尿病・甲状腺クリニックの清原義幹です。当院は糖尿病内科、内分泌 (甲状腺)・代謝内科を中心とした内科専門クリニックです。総合内科・糖尿病・内分泌代謝科の専門医としての知識と経験を活かしつつ、一般内科全般から糖尿病や甲状腺疾患をはじめとする内分泌疾患、高尿酸血症(痛風)などの代謝疾患、健康診断、予防接種まで幅広く診療しております。些細なことであっても、お身体のことでお困りのことがございましたら、是非お気軽にご相談ください。