糖尿病内科|きよはら内科クリニック|肥後橋駅すぐの内科、糖尿病内科、内分泌・代謝内科

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糖尿病内科

糖尿病内科|きよはら内科クリニック|肥後橋駅すぐの内科、糖尿病内科、内分泌・代謝内科

当院の糖尿病診療について

糖尿病内科

糖尿病は、高血圧、脂質異常症などともに生活習慣病とも呼ばれ、過食や偏食、運動不足、喫煙など長い間の生活習慣の乱れが原因となる病気です。
きよはら内科クリニックでは、病状だけでなく仕事や生活環境に応じた適切な治療法を患者さまご本人と相談しながら選択していきます。
糖尿病治療においては、血液中に含まれるブドウ糖の濃度(血糖値)を良好に保つことにより合併症が起こらないようにすることが最も重要であり、そのために定期的に検査を行い、早期発見・早期治療に努めてまいります。より専門的な検査や治療が必要な場合は、連携先の地域基幹病院の専門科をご紹介いたします。

糖尿病とは

糖尿病とは、膵臓のベータ(β)細胞から分泌され、血糖値を降下させる唯一のホルモンである「インスリン」の量が不足したり(インスリン分泌不足)、効きにくくなったりして(インスリン抵抗性増大)、「インスリン作用不足」をきたすことにより、血液中のブドウ糖が増えすぎた状態(高血糖状態)が長く続く病気です。
現在、我が国には約1,200万人の糖尿病患者さまがいると言われていますが、いわゆる糖尿病予備群の人も含めると、約2,200万人にのぼると推計され、その数は20年で約1.5 倍にも増加しています(令和元年国民健康・栄養調査)。しかし、“国民病”といえるほど多い病気にもかかわらず、糖尿病患者さまの3割以上がほとんど治療を受けておられません。というのも、糖尿病は初期には自覚症状がほとんどないため治療せずにそのまま放置している人が多いからなのです。

糖尿病の主な自覚症状

高血糖状態が続くと、のどが渇く(口渇)、水分をたくさん飲む(多飲)、尿の量が増える(多尿)、疲れやすい(全身倦怠感)、体重が減る(体重減少)などの症状が現れます。
しかし、糖尿病と診断された人の多くは無症状といわれるように、糖尿病初期にはほとんど自覚症状がないため、まだ大丈夫と油断して、きちんと治療を受けていない人も少なくありません。症状が現れたときには、糖尿病はかなり進行して、合併症を起こしているケースも多くみられます。いま困った症状がなくても、積極的に治療に取り組むことが大切です。

このような症状やお悩みがある方はご相談ください

  • のどが渇き、水分を多く摂るようになった
  • 尿の回数や量が増えた
  • 最近、疲れやすい
  • 体重が減少してきた
  • 血糖値が高め
  • 家族や血縁者に糖尿病の人がいて自分も心配

糖尿病の症状は人によって様々です。初期は自覚症状が乏しく早期発見が難しい病気です。
気になる症状がある方や、健康診断などで高血糖や尿糖を指摘された方は早めの受診をお勧めします。

糖尿病のタイプ

糖尿病は基本的に「1型糖尿病」と「2型糖尿病」に大別されます。1型糖尿病が膵臓のβ細胞が破壊されインスリンがほとんど分泌されないのに対して、インスリンは分泌されるものの、量が不足したり、効きが悪くなるのが2型糖尿病です。日本人の糖尿病患者さまの約95%が2型糖尿病です。
1型糖尿病はβ細胞が破壊され、インスリンが絶対的に欠乏することにより発症しますが、β細胞が破壊される原因としては、主に異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃する自己免疫性と原因のよくわかっていない特発性に分類されます。
それに対して、2型糖尿病はインスリン分泌量が不足したり、効きが悪くなる体質(遺伝的要因)に、食べすぎや運動不足といった生活習慣(環境的要因)が重なって発症します。

糖尿病の診断

血糖値は食事の前後や時間帯などによって大きく変動します。そこで安定した血糖値の状態を表す指標として、現在、広く使われているのがHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。HbA1cは採血時から過去1~2ヶ月間の血糖値の平均を示す値です。長期間の血糖コントロールの状態が分かるため、糖尿病の合併症予防のための血糖コントロールの指標として用いられます。
糖尿病かどうか診断するには、血液検査を行って血糖値やHbA1cが高いかどうかを調べます。

糖尿病の診断基準は以下の通りです。

  1. 早朝空腹時の血糖値が126mg/dL以上
  2. 75グラム経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200mg/dL以上
  3. 時間に関係なく測定した血糖値(随時血糖値)が200mg/dL以上
  4. HbA1cの値が6.5%以上

1度の検査で(1)~(3)のうちの1つと(4)が同時に確認された場合、糖尿病と診断されます。

糖尿病治療の目的と目標

糖尿病は完治させることはできませんが、きちんと治療して、うまく付き合っていくことでコントロールすることができる病気です。食事療法・運動療法を基本に、薬物療法をうまく組み合わせながら、血糖値を良好に保つことで、合併症の発症・進展を予防することにより健康な人と変わらない生活を送ることができます。健康な人と変わらない生活を送るためにも、普段から生活習慣に気をつけ、定期的に検査を受けましょう。

糖尿病の治療では、患者さまの状態によって目標値が変わります。
まず、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合、HbA1c 6.0%未満を目標とします。
次に、上記の目標を達成するのが困難な場合でも、合併症を予防するためにはHbA1c 7.0%未満を目標値とします。対応する血糖値としては、空腹時血糖値 130 mg/dL未満、食後2時間血糖値 180 mg/dl未満をおおよその目安とします。
さらに、低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合でもHbA1c 8.0%未満を目標値とします。

糖尿病の治療

糖尿病の治療は、食事療法・運動療法を基本とし、薬物療法をうまく組み合わせながら、血糖値を良好に保つことで、合併症の発症・進展を予防することを目標とします。

食事療法

食事療法は糖尿病治療の基本であり、どのような治療を行っている人でも、必ず行わなければなりません。血糖コントロールをよくし、合併症を防ぐためには、主治医の指示を守って、正しい食事療法を毎日続ける必要があります。「食事療法」といっても、何か特別なことをするわけではなく、食べてはいけないものもありません。正しい食習慣を守り、過食を避け、規則正しい食事をすることが大切です。

食事療法の3大ポイント

  1. 適正なエネルギー量を守りましょう
  2.   適正な体重を維持しながら、日常生活に必要なエネルギーはしっかり摂ることが大切です。

      食べすぎないように注意しましょう。

  3. 栄養バランスのよい食事を心がけましょう
  4.   3大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)をはじめ、ビタミン・ミネラル・食物繊維などを

      過不足がないように摂りましょう。1日30品目が目標です。

  5. 1日3食、規則正しく食べましょう
  6.   3食を決まった時間に食べる習慣をつけましょう。1回にたくさん食べず、

      1日のエネルギー量を3食に分け、均等に食べることが大切です。

運動療法

運動療法は、食事療法とともに糖尿病治療の基本です。運動には、ブドウ糖を消費して血糖値を下げたり(急性効果)、インスリン抵抗性を改善する(慢性効果)といった主な効果のほかにも、肥満の解消や動脈硬化の予防、筋力増強・柔軟性の改善など、さまざまな効果があるため、毎日の生活に積極的に取り入れるようにしましょう。ただ、患者さまによっては運動を制限したほうがよい場合もあるため主治医とよく相談の上、無理のない範囲で継続していきましょう。
運動は有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)とレジスタンス運動(筋力トレーニング、階段の昇り降りなど)の2つに分類されます。有酸素運動とは、体で酸素を使い、糖や脂肪を燃焼させる全身運動であるのに対して、レジスタンス運動は筋肉に負担をかける動作を繰り返し、筋力アップを図る運動のことです。無理なく継続しやすい有酸素運動を中心に、筋力を向上させるレジスタンス運動も組み合わせて行うとより効果的です。
糖尿病の人は、あまりきつい運動でなく、中くらいの強さの運動を続けていくことが大切です。数回に分けてもかまいませんが、あまり短いと血糖改善や脂肪燃焼に対する効果が現れませんので、1回の運動は15分以上続けるようにしましょう。毎日が無理でも、1日おきでも効果があります。

薬物療法

糖尿病治療の基本は、食事療法と運動療法です。しかし、これらを行っても血糖コントロールが不十分な場合、合併症になる危険が高まるため、補助的に薬による治療(薬物療法)を行って、血糖値を下げる必要があります。糖尿病の薬には飲み薬と注射薬があり、どの薬を用いるかは糖尿病のタイプや病状、合併症の状態によって決められます。
膵臓でインスリンが作れない1型糖尿病ではインスリン注射で外部からインスリンを補う必要があります。一方、2型糖尿病では「経口血糖降下薬」と呼ばれる飲み薬やインスリンやGLP-1受容体作動薬と呼ばれる注射薬が使われます。

糖尿病の合併症

糖尿病の合併症には、高度のインスリン作用不足(インスリン分泌が著しく低下したり、効きがとても悪くなる)によって起こる急性合併症と長年の高血糖によって起こる慢性合併症があり、いずれも患者のQOL、生命予後を悪化させます。これらの合併症の発症を予防し、進展を阻止することが糖尿病治療の目的です。
糖尿病の急性合併症とは、緊急治療を必要とするような意識障害をきたす合併症のことであり、適切な治療が行われなければ生命をおびやかすこともあります。急性合併症には、感染症や脱水、治療の中断や甘いジュースの飲みすぎなどがきっかけとなって、異常な高血糖となることで急激に発症する高浸透圧高血糖状態と極度のインスリン欠乏によりケトン体とよばれる物質が増加することにより血液が酸性に傾き、重度の場合には昏睡にも陥る糖尿病性ケトアシドーシスがあります。生命に関わることもありますので、急いで医師に相談するようにしてください。
糖尿病の慢性合併症とは、自覚症状がないからといって高血糖状態を長期間放置しておくことによって血管や神経が傷つき、さまざまな臓器に起きる障害のことです。合併症には、細い血管に起こる細小血管障害と大きな血管に起こる大血管障害があります。
細小血管障害(糖尿病の三大合併症)や大血管障害(脳梗塞、心筋梗塞など)を防ぎ、進行を阻止するためにも、血糖コントロールをきちんと行い、定期的に検査を受けることが大切です。

細小血管障害(糖尿病の三大合併症)とは

細小血管障害には、三大合併症といわれる糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害があります。これらは高血糖によって網膜や腎臓などの細い血管、神経などが障害されて起こります。網膜症による失明のほか、腎症による人工透析導入、足の切断は増え続けています。わが国では年間3,000人以上が糖尿病網膜症の進行によって失明し、さらに年間16,000人以上が糖尿病性腎症の進行によって人工透析導入、年間3,000人以上が糖尿病性足病変の進行によって下肢切断となっています。

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、糖尿病によって目の中の網膜の毛細血管が傷つき、視力が低下する病気で、最終的に失明に至ることもあります。糖尿病網膜症は中途失明原因の第2位を占めています。2型糖尿病は発症時期が定かでないことが多く、自覚症状がみられる頃には、かなり進行している可能性があります。重くなってからでは治療が難しく、視力が回復しないことも多いため、糖尿病と診断されたら、定期的に目の検査を受けることが大切です。

糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、糖尿病によって腎臓が障害される病気で、病状が進み、腎臓の機能が完全に失われてしまう末期腎不全まで至ると、人工透析や腎移植が必要になります。人工透析を受ける患者さまは増え続けており、糖尿病性腎症は、1998年以降、新しく人工透析を始める原因疾患の第1位となっています。
腎臓には、血液をろ過して老廃物や余分な水分を取り除き、尿として体外に排泄するはたらきがあり、その中心的役割を果たしているのが「糸球体」です。糸球体は毛細血管の集まりで高血糖状態が続くと、糸球体の毛細血管が障害され、血液をろ過する機能が弱くなっていきます。そうすると、アルブミン(タンパク質の一種)やタンパク質が尿に出たり、老廃物が体にたまるようになります。末期腎不全にまで至ると、腎臓のかわりに機械で血液をきれいにする人工透析などが必要になります。
現在のところ、糖尿病性腎症の特効薬はありません。腎症の発症・進行を食い止めるためには、血糖コントロール、血圧コントロール、食事療法(タンパク質・塩分・カリウムの制限)を確実に行っていくことが治療のカギとなります。

糖尿病性神経障害

神経障害は、高血糖状態が続くことによって末梢神経や自律神経が障害され、痛みやしびれなどが起こる病気です。三大合併症の中では自覚症状があるので、最も早期から発見されます。最初のうちは、手足のしびれや痛み、こむら返り、感覚低下などが主ですが、進行すると足の壊疽の原因となります。日本では、神経障害や足の血流障害などにより糖尿病性足病変が進行し、毎年 3,000人以上の人が足を切断しています。軽症のうちなら、血糖コントロールだけでも症状が改善しますが、進行すると回復が難しいため、定期的に検査を受け、早期発見・治療を心がけましょう。
神経障害の原因は高血糖ですから、進行を防ぐにはやはり良好な血糖コントロールを維持することが大切です。足の傷に気づかないまま悪化させてしまうと、潰瘍や壊疽の原因となりますので、足のチェックはこまめに行いましょう。

糖尿病に合併した高血圧症

糖尿病の人の半数以上が高血圧症を合併しているといわれています。糖尿病と高血圧症が重なると、動脈硬化が加速し、心筋梗塞や脳卒中になる危険性が高まります。また、高血圧症は糖尿病腎症や網膜症を悪化させる原因にもなるため、血糖値同様、血圧も積極的にコントロールすることが大切です。
高血圧症と診断され、治療が必要になるのは、140/90 mmHg以上ですが、糖尿病の人は、動脈硬化が進みやすいため、130/80 mmHg以上で治療が必要になります。糖尿病の人、とくに腎症がある人にはより厳しい降圧目標が設けられています。
高血圧症の治療では、糖尿病と同じく、食事療法、運動療法が基本となります。食事でとくに重要になるのが減塩です。塩分の摂りすぎは、血圧を上昇させるだけでなく、腎臓にも悪影響を及ぼしますので、1日6 g未満を目標に減塩に努めてください。ふだんの自分の血圧を知って、治療に役立てるためにも、家庭血圧測定が重要です。朝晩の血圧を測り、記録するようにしましょう。
食事療法、運動療法を実施しても降圧目標を達成できない場合には、薬物療法を開始します。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、カルシウム(Ca)拮抗薬、利尿薬の4種類の降圧薬を用い、降圧目標(130/80 mmHg未満)の達成を目指します。

糖尿病に合併した脂質異常症

脂質異常症は、血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)や中性脂肪(トリグリセリド)などが増えすぎるか、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が少なすぎる病気です。糖尿病は脂質の異常が起こりやすく、糖尿病に脂質異常症が合併すると心筋梗塞や狭心症などの心臓病の危険性が高まるため、きちんと治療する必要があります。
脂質異常症の治療でも、食事療法と運動療法が重要となります。基本は糖尿病の食事療法と変わりませんが、コレステロールの多い食品は少し控えるようにしましょう。運動は善玉コレステロール(HDLコレステロール)を増やす効果もあるため積極的に行ってください。
食事療法、運動療法を実施しても脂質管理目標値を達成できない場合には、薬物療法を開始します。血液中の悪玉コレステロール値が高い場合(高LDLコレステロール血症)の第一選択薬はスタチン系薬剤(HMG-CoA還元酵素阻害薬)です。中性脂肪の値が高い場合(高トリグリセリド血症)や善玉コレステロール値が低い場合(低HDLコレステロール血症)にはフィブラート系薬剤を考慮します。

糖尿病と肥満

肥満とは肥満係数(体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)により算出され、BMI(Body Mass Index)ともいいます)が25 kg/m2以上の状態であると定義されています。さらに、肥満には「皮下脂肪型肥満」と「内臓脂肪型肥満」の2つのタイプがあり、内臓脂肪型肥満は糖尿病や動脈硬化と関連が深いことが知られています。日本人は、肥満の程度が軽くても内臓に脂肪がつきやすく、糖尿病になりやすいといわれています。また、内臓脂肪型肥満ではインスリンの効きが悪くなって(インスリン抵抗性増大)、糖尿病以外に脂質異常症や高血圧も同時に現れ、さらに無症状の間に動脈硬化が進行してしまう「メタボリックシンドローム」になりやすいことが知られています。
肥満になると、インスリンの必要量が増えるため、膵臓のβ細胞はインスリンをたくさん作ろうとはたらき続けます。しかし、その状態が続くと、膵臓が疲れて、血糖を処理する機能に次々と異常が起こり、血糖値が上がり始めます。こうした肥満糖尿病では、腎症や網膜症などの合併症が進みやすく、糖尿病以外の病気にもかかりやすいことが知られています。
肥満糖尿病治療の目的は、インスリンの効きが悪い状態(インスリン抵抗性増大)を改善し、良好な血糖コントロールを取り戻すことです。そのためにも、まず減量が基本になります。
減量は、食事療法と運動療法を組み合わせて行うのが効果的です。食事で摂取エネルギーを制限し、運動で消費エネルギーを増やすことで、代謝を改善し、太りにくい体を作りましょう。発症初期なら、食事と運動による減量だけで良好な血糖コントロールを維持することが可能です。うまくいかない場合は、補助的に薬物治療を行うことがあります。

大血管障害とは

高血糖状態が続くと、動脈硬化が進んで、血管が硬くもろくなり、血液が流れにくくなります。脳や心臓、足などの大きな血管は動脈硬化の影響を受けやすく進行すると一過性脳虚血発作・脳梗塞、狭心症・心筋梗塞、末梢動脈疾患といった大血管障害が起こります。
動脈硬化を進める危険因子には、糖尿病の他、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙、加齢など、さまざまな要因があり、いくつかが重なると、一過性脳虚血発作・脳梗塞や狭心症・心筋梗塞、末梢動脈疾患になる危険が一気に高まります。動脈硬化によって硬くなってしまった血管を元に戻すことはできませんが、良好な血糖コントロールを維持しつつ、生活習慣を見直し血圧や脂質、体重も合わせて管理していくことで、進行を遅らせることができます。食事、運動に気をつけるのはもちろん、タバコは動脈硬化を進行させますので、禁煙しましょう。
また、動脈硬化は、血糖値がそれほど高くない“予備群”のころから始まっています。糖尿病と診断された時点ではかなり進行していると考え、適切な治療を行うとともに、定期的な検査を受けましょう。

脳血管障害

脳血管障害には全体の約75%を占める脳梗塞、約20%を占める脳出血、約5%を占めるくも膜下出血がありますが、脳梗塞については、糖尿病の人が、そうでない人に比べて2~4倍リスクが高いことが知られています。
脳梗塞とは、動脈硬化の進行によりもともと内腔が狭くなっている(狭窄している)ところで血栓が形成され内腔が完全に詰まる(閉塞する)ことにより、脳を栄養する動脈の血流がストップし、酸素や栄養を受けている神経細胞が死ぬことで、さまざまな後遺症を残す病気です。それに対して、一時的に血管が閉塞する一過性脳虚血発作は、24時間以内にもとの状態に戻るため原則として後遺症を残すことがなく、脳梗塞とは区別されます。後遺症を残さないからといって、一過性脳虚血発作を治療しないで放っておくと、3ヶ月以内に15~20%の方が脳梗塞を発症し、そのうち半数は一過性脳虚血発作を起こしてから数日以内(特に48時間以内が危ない)に脳梗塞になることが知られていますので、すぐに病院を受診しましょう。
脳梗塞の症状としては、片腕、片足が動きづらくなる(片麻痺)、ろれつが回らなくなる(構音障害)、言葉が出てこなくなる(失語)などがあります。それに対して、一過性脳虚血発作では、一過性の脱力・片麻痺や失語のほか、めまいや一過性に目の前が真っ暗になる(一過性黒内障)といった症状が出現することがあります。

虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、心筋に酸素や栄養を運ぶ冠動脈と呼ばれる動脈が動脈硬化により狭窄や閉塞を起こすことで、心筋への血流が阻害され、心臓に障害が起こる病気の総称です。虚血性心疾患には狭心症や心筋梗塞が含まれます。
狭心症は冠動脈が動脈硬化で狭窄しているところに、階段を上がるなどの心筋の酸素需要が増すような運動などが引き金となり、一過性に冠血流が悪化し心臓が一時的に酸欠状態となって起こります。胸のあたりに圧迫されるような痛み(前胸部絞扼感)や苦しさを感じたりしますが、数分から十数分程度で消失し後遺症を残しません。
それに対して、心筋梗塞は冠動脈が閉塞したために、酸欠から心筋の一部が死滅(壊死)してしまうほど悪化した状態をいいます。左胸のあたりを中心に非常に強い圧迫感(前胸部絞扼感)や激しい痛みが起こり、人によっては肩や背中、首などに痛み(放散痛)を感じることもあります。症状は30分以上、ときには数時間に及びます。心筋梗塞の死亡率は約30%と高く、生命に別状がなくても、心不全や不整脈などの合併症が起こることがあります。
糖尿病の人が心筋梗塞を起こした場合、無痛性のことが多く、発見・治療が遅れてしまうため注意が必要です。

末梢動脈疾患

末梢動脈疾患とは、足の動脈が動脈硬化により狭窄や閉塞を起こすことにより、足に十分な血液が流れなくなることで発症する病気です。症状は、足のしびれ・冷感から始まり、病気の進行に伴い、間歇性跛行(ある程度歩くと足の痛みが生じるが、一旦休憩すると、また歩けるようになること)、安静時疼痛、皮膚潰瘍を認めるようになります。糖尿病の人の10〜15%が末梢動脈疾患を合併します。

骨粗鬆症

骨粗鬆症は骨の強度が低下することにより骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です。閉経後の女性によくみられ、高齢者では寝たきりの原因にもなります。糖尿病の人は、そうでない人に比べて骨粗鬆症になるリスクが高く、とくに1型糖尿病の人は6~7倍といわれています。これは、インスリンには血糖値を下げるだけでなく、骨の生成を促すはたらきもあるため、インスリンの分泌量が減ったり、はたらきが悪くなると、丈夫な骨がつくれなくなるからです。また、インスリンを分泌する能力が保たれている2型糖尿病でも、高血糖により骨質が悪化すると考えられています。
骨粗鬆症による骨折は、QOL(生活の質)を大きく低下させ、寝たきりなどの原因になります。ふだんから、骨を丈夫に保つための食事や運動を心がけるようにしましょう。
とくに糖尿病の人は、骨粗鬆症になりやすいうえに、立ちくらみやふらつきを起こしやすいため、注意が必要です。日ごろから足の筋肉を鍛えるとともに、階段やつまづきやすい場所に手すりをつける、部屋を明るくする、低い姿勢から立ち上がるときはゆっくり立ち上がるなど、しっかり対策を講じることで転倒を防ぎましょう。

がん

国内外で発表された研究によると、糖尿病(主に2型糖尿病)の人は、がんリスクが20%ほど高いことが報告されています。日本人では特に大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが高いとされています。ほかの種類のがんについては、一定の結論が得られていません。ただし、血糖値が高いことが原因となって、がんが生じているのかどうかについては、まだわかっていません。

認知症

年を重ねると誰しも、もの忘れをしやすくなったり、自分の身の回りのことができなくなったりします(認知障害)。特に糖尿病のある高齢者の場合は、高血糖の状態が長く続くことで認知機能が低下しやすくなり、もともと軽度の認知障害がある方はさらに進んで認知症を発症しやすいといわれています。
具体的には、糖尿病の方はそうでない方と比べると、アルツハイマー型認知症に約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告されています。また、糖尿病治療の副作用で重篤な低血糖が起きると、認知症を引き起こすリスクが高くなると言われています。

日常生活での注意点

感染症対策

糖尿病患者さまは、肺炎や膀胱炎あるいは風邪といった感染症にかかりやすいことが知られています。これは、血糖コントロールが悪化すると、好中球(白血球の成分の一つ)が体内に侵入した細菌などを貪食(取り込み、消化し、分解する)しにくくなったり、免疫反応が低下するなどの理由から、ウイルスや細菌などに対する感染防御機構が容易に破綻してしまうからです。
糖尿病患者さまがかかりやすい感染症としては、上気道感染症(上気道炎・肺炎など)、尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)、胆嚢炎などがあげられます。

脱水症対策

肺炎や膀胱炎といった感染症や怪我、ストレスを受けた時などには血糖のコントロールが乱れて高血糖が持続し、脱水が起こりやすくなります。脱水状態では、血流が低下し、血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞を誘発することがありますので、十分な水分摂取と良好な血糖コントロールを心がけましょう。

フットケア

血糖値が高い状態が続くと、神経障害や血流障害が起こり、神経の末端部分である足に糖尿病性足病変がみられるようになります。高血糖状態では傷は治りにくく、細菌にも感染しやすくなります。足の傷は、目にふれにくい部分にあり、知覚が鈍く、視力も低下しがちな糖尿病患者さまでは、発見が遅く、重症化しがちです。
糖尿病患者さまは、たこ、まき爪、水虫、乾燥・ひび割れなどの足病変が起こりやすくなります。気づかずに放置したまま、重症化してしまうと、潰瘍(足の皮膚に穴があき、欠損を生じた状態のこと)や壊疽(足の組織が腐ってしまうこと。黒色、悪臭を示します。)を起こし、場合によっては足を切断しなければならないケースもあります。小さな変化も見逃さないよう、こまめに足をチェックし、異常があれば、主治医や看護師に相談しましょう。
足病変から足を守るためには、良好な血糖コントロールを維持することはもちろん、日頃のケアが重要です。フットケアのポイントとしては、「足を毎日洗い、清潔にする」、「爪を正しく切る(皮膚を傷つけないように気をつけ、先がまっすぐになるように切る)」「足に合った靴を選ぶ」などが挙げられます。

口腔ケア

近年、三大合併症(網膜症・腎症・神経障害)や動脈硬化性疾患と並んで、注目されている合併症が歯周病です。糖尿病の人はそうでない人に比べ、2倍以上も歯周病になりやすく、また、歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすことも分かっています。初期の症状は歯茎が腫れるくらいですが、進行すると歯を失うこともあります。現在、成人が歯を失う原因の第1位は、歯周病によるものです。
歯周病は何年もかけてゆっくり進行します。自覚症状に乏しく、気づいたときにはかなり進行していることもあります。歯をきちんと磨くなどの口腔ケアと正しい食事療法により、口の中はいつも清潔を保ち、歯周病を予防しましょう。また、定期的に口の中をチェックして、異常があれば早めに歯科医を受診しましょう。

災害への準備と注意

大地震や台風などの災害は、いつ起こるか分かりません。被害に遭ったり、避難所での生活が続くと「食事が摂れない」「食事が偏る」「ストレスが増える」など、いつもと違った生活を余儀なくされるため、血糖コントロールが乱れやすくなります。日頃から、非常用持ち出し袋を用意するなど、もしものときの準備を心がけ、薬の飲み方やインスリンの打ち方についても、主治医と相談しておきましょう。

旅行時の注意点

血糖コントロールが良好であれば、健康な人と同じように旅行を楽しむことができます。体調を整え、無理のないスケジュールで、旅行を計画してください。旅先では、食事の時間が前後したり、歩く距離が長くなったりします。食事が遅れたときの非常食や低血糖時に飲むブドウ糖などを忘れずに携行しましょう。また、海外旅行の際は、時差や食事の時間も考慮に入れ、薬やインスリンをどのように調整すればよいか、主治医に確認しておきましょう。また、海外旅行には、海外旅行用 英文カード(Diabetic Data Book)を携帯するようにしましょう。

低血糖とシックデイの対処法

低血糖

低血糖とは、血糖値が正常範囲以下に下がりすぎた状態のことで(およそ70 mg/dL以下)、さまざまな症状が起こります。低血糖の状態が長く続くと、生命にかかわる危険もありますが、初期の段階で適切な対処をすれば、ほとんどのケースは回復します。
食事を摂らなかった、激しい運動をした、飲み薬(経口血糖降下薬)の一部やインスリン注射の量が多すぎた、というように、食事・運動・薬のバランスが崩れると、血糖値が下がりすぎて低血糖を起こしやすくなります。しかし、低血糖を心配するあまり、勝手に薬物療法を中止してはいけません。また、低血糖症状がみられたら、いつ、どんなときに起こったか、主治医に報告するようにしましょう。
血糖値がおよそ70 mg/dL以下になると、インスリン拮抗ホルモン(グルカゴンやアドレナリンなどのインスリンの作用と相反する作用をもち、血糖値を上昇させるホルモン)が上昇し、冷や汗や不安などの交感神経刺激症状が現れます。さらに、50 mg/dL程度になると、脳や神経のはたらきが低下して、頭痛や眠気といった中枢神経症状が現れ、50 mg/dL以下になると、意識障害や痙攣を起こし、昏睡に陥ることもあります。交感神経刺激症状は、これ以上血糖値が下がると危ないことを知らせる“警告症状”です。症状の感じ方や現れ方には個人差がありますから、自分の初期症状を理解して、すぐ対処できるようにしておきましょう。ただ、警告症状なしに、いきなり意識障害を起こすこともあります。これは、無自覚性低血糖と呼ばれ、低血糖でも交感神経が反応しない高度な神経障害の人に起こりやすく、特に注意が必要です。
低血糖の症状が現れたら、すぐにブドウ糖(5~10 g)を摂って、安静にすることです。ブドウ糖がなければブドウ糖を多く含む清涼飲料水や砂糖でもかまいません。ふだんからブドウ糖やスティックシュガーを携帯するようにしましょう。たいてい15〜20分程度で症状が治まります。症状が改善しない場合は、もう一度、糖質を摂るようにしましょう。

シックデイ

糖尿病の人が、風邪などで熱を出したり、胃腸障害で食事ができないなど、さまざまな不具合がある状態を「シックデイ(Sick Day)」といいます。
シックデイのときは、血糖値が高くなったり、低くなったり、乱れやすくなり、ふだんより血糖コントロールが難しくなります。著しい高血糖をきたす場合もあるため、きちんとした対処法を身につけることが大切です。
シックデイのときは、シックデイ・ルールを守り、できるだけ安静にしてください。食欲がなくても絶食はせず、消化や口当たりのいいもの(お粥など)を選んで、食べるようにしましょう。早めにきちんと対処すれば、シックデイを短期間で乗り切ることができます。シックデイ・ルールを身につけるとともに、ふだんから、うがい・手洗いを励行し、風邪などの病気にかからないように予防することも大切です。

シックデイ・ルール

  1. 水分は十分に補給する(1日1 L以上)
  2. できるだけ炭水化物を摂る(1日100 g以上)
  3. 飲み薬(経口血糖降下薬)で治療している場合、食事量にあわせて減量もしくは中止する(具体的な減量・服用中止については、主治医と相談する)
  4. インスリン療法を行っている場合、食事ができなくてもインスリン注射を中止しない(基礎インスリンはそのままの単位数で継続し、追加インスリンは食事の量をみながら調節します)
  5. インスリン注射などの注射薬で治療している人は血糖自己測定をこまめに行う
  6. 早めに主治医と連絡をとる(発熱や消化器症状が強いとき、判断に迷うときは、受診する)

糖尿病療養指導

糖尿病の治療には患者さまの自己管理がとても大切です。当院では糖尿病とその療養指導に関して幅広い専門知識をもって、患者さまが適切な自己管理が行えるように援助します

主な療養指導の内容

  • 糖尿病について(病気と検査内容の説明など)
  • 糖尿病の治療について(食事療法、運動療法、薬物療法など)
  • インスリンなどの注射薬自己注射の手技指導
  • 血糖自己測定の手技指導
  • 日常生活での注意点(感染症対策、脱水症対策、フットケア、口腔ケアなど)と相談
  • 低血糖/シックデイについて

糖尿病栄養指導

ご自身の生活スタイルに合った食事療法を続けていくためには、管理栄養士による「栄養指導」を活用することも有効です。
食事療法が身に付いて良好な血糖コントロールを維持されている方も多くいらっしゃる一方、懸命に食事療法に取り組んでいても、思ったような効果が出ない、何をどう改善すれば良いのかよく分からない、と感じている方もおられます。こうした食事療法の問題点を管理栄養士とともに解決していくのが栄養指導です。医師の指示のもと、糖尿病や高血圧、脂質異常症など食生活の改善が必要と判断された方に対して、管理栄養士による栄養指導を行っております。